Thermal load, Energy-conserving Simulation熱負荷・省エネルギーシミュレーション

Rhinoceros + Grasshopperを用いた
室内温熱環境の年間評価

室内の温熱環境評価の一つとして、年間を通した快適性を評価する方法があります。ここではThermal Comfort Percent(TCP)について、Rhinoceros + Grasshopperを用いた評価例を紹介します。

TCPとは、室内のある評価点について、PMVの値が快適域(-0.5~PMV~+0.5)に収まる時間の年間合計値を8,760時間(24時間×364日)で割ったものです。値が大きいほど高い快適性を有すると評価できます。

このような温熱環境評価を行う場合、今までは専用の解析システムを用いることが多かったのですが、近年は3D CADとプラグインで行うことができるようになってきました。
今回、3D CADのRhinoceros + Grasshopperとプラグイン(Ladybug + Honeybee)を用いて、南向きの住宅の一室をモデルに、透明複層ガラスとLow-E複層ガラスでTCPを比較検討しました。

【窓構成】

  • ・透明複層ガラス(FL3+A6+FL3)+アルミサッシ
    窓としての性能値※1: 熱貫流率4.2W/(㎡・K),日射熱取得率 0.63
  • ・Low-E複層ガラス(FL3+Ar12+ Low-E3)+樹脂サッシ
    窓としての性能値※1: 熱貫流率2.1W/(㎡・K),日射熱取得率 0.46

※1 出典:板硝子協会資料「(住宅) ガラスの仕様と枠の種類に応じた窓の熱貫流率・日射熱取得率」

【空 調】
夏期:28℃,冬期:21℃

【代謝量】
1.0met(椅座安静)

【着衣量】
0.46(夏期標準レベル相当,外気温26℃時)~1.1(冬期標準レベル相当,外気温10℃時)
外気温によって着衣量を変動

【使用ツール】
Rhinoceros(Rhino6) + Grasshopper,Plugin(Ladybug + Honeybee),EnergyPlus

次の図は、PMVの値が快適域を超える(暑い)時間の割合、快適域を下回る(寒い)時間の割合、快適域に収まる時間の割合(TCP)の分布を図示したもののです。

■快適域を超える(暑い)割合

■快適域を下回る(寒い)割合

■TCP(Thermal Comfort Percent:快適域(-0.5~PMV~+0.5)に収まる割合)

日射熱の取得はLow-E複層ガラスのほうが小さいため、窓面付近を中心に暑くなる時間が少なくなると考えられます。また、冬期の夜間など日射が無く外気温が低い時間帯は、Low-E複層ガラスのほうが室内側表面温度は高くなるため、寒くなる時間は少なくなると考えられます。これらの要因が重なり、TCPもLow-E複層ガラスのほうが良い値になったと考えられます。

窓ガラスや遮蔽物による室内温熱環境への影響を判断する際に、これらの評価指標を活用することができます。また、3D CADとプラグインで解析できるため、比較的簡易に温熱環境評価のケーススタディ等を行うことができます。