Thermal load, Energy-conserving Simulation熱負荷・省エネルギーシミュレーション

空調設定温度を1℃緩和した場合の
省エネ量について

空調設定温度を1℃緩和する(冷房時は設定温度を高くする・暖房時は設定温度を低くする)と、空調消費エネルギーは約10%削減出来ると言われています。設定温度を緩和した場合としない場合について戸建住宅及び事務所ビル基準階ペリメータ部の年間熱負荷計算を行い、比較を行いました。

戸建住宅の熱負荷計算事例

高遮熱断熱Low-E複層ガラスを用いた2階建て戸建住宅をモデルとして、次の3パターンで熱負荷計算を行いました。

  冷房 暖房  
パターン1 26℃ 22℃  
パターン2 27℃ 21℃ 冷房+1℃、暖房-1℃、パターン1より1℃緩和
パターン3 28℃ 20℃ 冷房+2℃、暖房-2℃、パターン2より1℃緩和

湿度は冷房時:60%、暖房時は成り行きとする。外気温度が空調設定温度より2℃以上下回る時は、窓開放による通風を行う。


延床面積125.88m²

戸建住宅モデルの平面図

年間熱負荷は次のようになりました。

空調をエアコンで行った場合の消費電力量は次のようになりました。


エアコンの冷房COP:3.0、暖房COP:4.0とした場合

年間の合計値は、設定温度を1℃緩和することで17%~19%の熱負荷削減となり、エアコンで空調を行った場合の消費エネルギー(電力量)も、同様に17%~19%の削減となりました。一般的に言われる設定温度1℃緩和で空調消費エネルギー10%削減という値は、今回の試算より若干少ないものの、概ね正しいことが判りました。

基本計画段階では、この10%という値は目安として使えますが、地域や方位などの立地条件、間取りや床面積・断熱性能などの建物条件等で削減効果は異なりますので、実施設計や具体的な計画時は年間熱負荷計算により詳細に算出することをお奨めします。

事務室の熱負荷計算事例

高2階建て戸建住宅では、空調設定温度を1℃緩和することにより、17%程度の削減効果が得られました。次に、外皮の4割程度が開口部になる事務所ビルで冷暖房の熱負荷を求めました。

高遮熱断熱Low-E複層ガラスを用いた事務所ビル基準階の、ペリメータ部(床面積150m²)について、次の3パターンで熱負荷計算を行いました。

  冷房 暖房  
パターン1 26℃ 22℃  
パターン2 27℃ 21℃ 冷房+1℃、暖房-1℃、パターン1より1℃緩和
パターン3 28℃ 20℃ 冷房+2℃、暖房-2℃、パターン2より1℃緩和

下図に示すペリメータ部において幅10m、奥行き5mのモデルで熱負荷計算を行い、結果をペリメータ全体の熱負荷に換算することで、1フロアのペリメータ部熱負荷を算出しました。

年間熱負荷は次のようになりました。

事務所ビルの中間階では、上下階方向への熱の移動が無視でき、内部発熱の影響もあるので、冷房負荷が暖房負荷を大きく上回っています。

空調温度を1℃緩和することで15~16%の熱負荷削減となり、戸建住宅と同様に一般的な10%を超える結果となりました。地域や方位などの立地条件、開口部・断熱性能などの建物条件や運用条件等で削減効果は異なりますので、実施設計や具体的な計画時は年間熱負荷計算により詳細に算出することをお奨めします。

なお今回の計算は、開口部のブラインドは常時閉じた条件で計算を行っていますが、開口部が受ける日射量に応じてブラインドの開閉を行うなど複雑な運用条件や、ダブルスキン・エアフローウィンドウ・外部ルーバーなどの扱いの難しい開口部での熱負荷計算を行うことも可能です。