地球温暖化対策としての省エネルギー意識が高まり、省エネルギー効果の高いガラスを住宅や事務所ビルなどの建物に採用する場合が増えてきています。特にLow-E複層ガラスは省エネルギー効果が高く、室内の温熱快適性効果も優れているガラスであり、今後のさらなる普及が見込まれています。
ここでは、高遮熱断熱Low-E複層ガラスと透明複層ガラスについて、室内の温熱環境シミュレーションで快適性を比較した事例をご紹介します。
図1 高遮熱断熱Low-E複層ガラス
図2 透明複層ガラス
表1 シミュレーションで使用したガラスの性能値
透過率 [%] |
吸収率 [%] |
反射率 [%] |
日射熱取得率 | 熱貫流率 [w/m²k] |
|
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高遮熱断熱Low-E複層ガラス(グリーン) | 37.1 | 28.8 | 34.2 | 0.42 | 2.6 |
透明複層ガラス | 74.4 | 11.9 | 13.7 | 0.79 | 3.4 |
板厚は室外側ガラス、室内側ガラスともに3ミリ、空気層は12ミリ
シミュレーション日時 | 8月1日15時 |
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外気温度 | 35.9℃ |
吹き出し温度 | 18.0℃ |
吹き出し風量 | 660m³/hr |
吹き出し風速 | 2.8m/s |
図3 シミュレーションモデル
図4は【A】高遮熱断熱Low-E複層ガラス、図5は【B】透明複層ガラスの条件で計算した表面温度分布図です。
図4の【A】高遮熱断熱Low-E複層ガラスの条件では、ガラス表面温度は32℃前後に、図5の【B】透明複層ガラスの条件では、ガラス表面温度は36℃前後になっています。高遮熱断熱Low-E複層ガラスのガラス表面温度が透明複層ガラスより4℃前後低くなっており、高遮熱断熱Low-E複層ガラスの効果がシミュレーションに反映されていることがわかります。
図4【A】高遮熱断熱Low-E複層ガラス
図5【B】透明複層ガラス
次に、PMVを算出した結果を示します。ガラス面からの距離0.5m、床面高さ1.0mの位置に微小立方体を配置し(図6)、MRT(各面の平均値)を算出しました。MRT以外の条件は全てのケースで同一として、PMVを算出しました。
〈MRT以外のPMV算出条件〉
代謝量:1.0met
着衣量:0.4clo
温度:26.0℃
風速:0.2m/s
相対湿度:50.0%
図6 PMV算出微小立方体位置
表3 MRT、PMV結果
ガラス条件 | MRT [℃] |
PMV [-] |
|
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【A】 | 高遮熱断熱Low-E複層ガラス | 37.1 | 1.6 |
【B】 | 透明複層ガラス | 45.4 | 3.0 |
快適性を評価するために、温熱環境評価指標のPMVで比較すると、【B】透明複層ガラスの3.0に対して、【A】Low-E複層ガラスは1.6となりました。今回の検討では、ブラインドまたはカーテンが付いていない場合の検討だったので、PMV値は絶対値として大きいですが、Low-E複層ガラスの方が、透明複層ガラスよりも快適域に近い値となっています。
開口部の設計時に、Low-E複層ガラスの快適性を正しく評価するために、弊社の保有するノウハウを活用していただければ幸いです。