Archived Materials資料室

ビル風Q&A

ビル風に関してお問い合わせ頂く中で、比較的多い質問についてQ&A形式でご紹介します。
回答については、風に関する書籍や文献等を広く参考にしております。
また、当社の経験に基づく判断でお答えしている項目もあります。
今後の風に関する研究成果などで変わる場合もありますので、宜しくご了承ください。

ビル風に関してのQ&A
5階建てのマンションを計画していますが、ビル風は起こりますか?
ビル風の発生状況は建物の形状、配置や周辺の状況によって異なりますので、弊社としては一概に問題ないとは言い切れません。ビル風の厳密な定義はありませんが、以前は高層建築物周辺に発生する強風による障害と考えられていました。しかし、昨今は比較的低層の建物でもビル風の問題を懸念される住民の方々も増えてきています。低層の建物だがビル風は問題ないか、という問い合わせをいただく件数も増えてきました。
近くに建物が建ってから風が強くなったのですが、何か対策はありませんか?
建物が竣工してからの対策では、遮蔽物を設置するスペースの問題で対策は限定されてしまうかもしれません。一般的には植栽、防風ネット、防風板などが考えられます。
建物を設計するにあたり、ビル風低減の対策として何がありますか?
これから設計をするのであれば、植栽、通路へのひさしの設置、防風板などを効果的に配置することが考えられます。また、なかなか難しいとは思われますが、縮流ができないよう建物の配置を見直す、建物の形状をできるだけ低層にする、主風向に対して横長にしない、平面を円形や多角形にするなどの低減策はあります。例えば、NEC本社ビル(東京都・田町)は、ビル風の影響を小さくするため建物の中間を空洞にしています。
ビル風の影響範囲はどれ位ですか?

周辺建物の状況により一概に言えませんが、計画建物高さの1~1.5倍の範囲と思われます。

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今建っている建物でビル風が起きているかどうか分かりますか?
ビル風は物理現象ですから当然起きていると考えられます。しかし、単にビル風が起きているからNG、とはならないと思います。それが許容できるかどうかが問題かと思われますが、風環境評価基準まで計算しないと判断できません。
検討期間、費用に関してのQ&A
ビル風の検討費用はどれ位かかりますか?

弊社の場合、シミュレーションで100~250万円位が通常価格帯となりますが、検討内容によってご相談させていただきます。費用は物件の形状、規模、敷地の高低差、周辺建物の状況、解析内容などによって異なります。報告書も結果がわかる程度の簡易な体裁で足りる場合は、割安にすることも可能です。なお、シミュレーションは風洞実験より安価で短納期です。

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シミュレーション費用が変わる要因は何ですか?

解析モデル作成の難易度、周辺状況、植栽などの対策案まで検討するかにより変わります。また、報告書の体裁によっても変わり、結果が分かる程度の簡易な体裁で良い場合は安価にすることも可能です。

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シミュレーションでの見積りをして欲しいのですが、建築前・建築後・植栽による対策後の3ケース合わせて出してもらえますか?
対策後の検討ケース数が何ケースになり、手間がどの程度かかるかは建築後のケースを評価してみないと判断できませんので、通常は建築前・建築後の2ケースでお見積りし、対策後はその結果をみて別途お見積りさせていただくことが多いです。もちろん、3ケース合わせてお見積りをお出しする場合もありますが、不確定要素のある中でお見積りしますので、若干割高になってしまうかもしれません。
シミュレーションモデルに関してのQ&A
植栽はどのようにモデル化していますか?
植栽の複雑な形状をモデル化するのは困難なので、植栽に相当する抵抗値を設定しています。抵抗値は既往の実験データを利用しています。この植栽抵抗を幾つに設定するかで結果が変わりますので、慎重に設定する必要があります。
シミュレーションではどの程度建物を再現するのですか?
ほぼ風洞実験と同様ですが、計画建物のこまかな凹凸までは再現せず、風環境の評価結果に影響のない範囲で簡略したモデル化をします。ピロティーなどがある場合はそれも再現します。周辺建物もほぼ同様ですが、遠くにある建物は一つひとつ再現せず、ある街区をブロックとしてまとめてしまう場合もあります。
シミュレーションではどの程度の範囲までモデル化するのですか?
条件によって一概には言えませんが、弊社の場合、計画建物高さを半径として2.5~3倍の範囲をモデル化しています。風洞実験においてもほぼ同様ですが、ターンテーブルの直径にあわせてそれ以上の場合もあります。
シミュレーションに関してのQ&A
ビル風の検討期間はどの位ですか?
シミュレーションは建築前後、または植栽などの対策後までで1ヶ月程度で報告書をご提出できます。初めの2週間程度で中間報告が可能ですが、特に対策後については対策内容により変わりますのでご相談ください。
検討する風向は何風向ですか?

弊社の場合、風環境評価尺度を用いて検討しており、シミュレーションでは通常16風向を行います。風洞実験の場合も16風向測定することが一般的です。

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ビル風の検討を依頼するには、どのような資料を用意すればいいですか?

建築前、建築後、対策後の3ケースを検討する場合、次の資料が必要になります。

  • ・建築前(現況)の平面図、立面図、配置図
  • ・計画建物の平面図、立面図、配置図、CADデータ(DXF形式)
  • ・住宅地図(周辺建物の形状、高さがわかる資料)
  • ・植栽などの配置計画
  • ・その地区の気象データ
    • ・住宅地図は弊社で地図情報をインターネットから入手することも可能です。
    • ・気象データは弊社で準備します。当該地区のデータがない場合は、一番近い気象台等の観測データを使用します。

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夏と冬の主風向(2風向)だけで簡易な検討はできませんか?
単純に建築前後で風速がどの程度増減するか計算することはできます。しかし、それでは良し悪しを評価することはできません。村上評価基準などの風環境評価尺度により評価するには、16風向計算して統計処理する必要があります。そのため、2風向程度では評価基準まで落としこんでの評価はできません。よって、その地域が住宅街や事務所街に許容されるレベルなのかどうか、判断することはできません。2風向だけの計算では仮に裁判になった場合、全く説得力の乏しい資料と言わざるを得ません。
コンピュータシミュレーションで外装材用の圧力分布を求められませんか?
弊社では現在、シミュレーションによる風圧力の計算受託はしていません。大学や研究所レベルでの研究例はありますが、非定常解析による特殊な計算が必要でデータ量も膨大になるため、実用レベルでの実施例は少ないようです。また、強度にかかわることですから、実物件に適用するにはその精度の検証は慎重にされるべきと思われます。今のところ外装材用の風圧力を求めたい場合は、風洞実験を実施することになります。
突風や竜巻などの局所的な風圧力を検討することができませんか?
同様に弊社では検討することはできません。また風洞実験でも局所的な検討をすることは困難です。通常は告示式で求められた風圧力を割り増すか、竜巻の風速を想定して風圧力に換算する形で検討することが一般的かと思われます。
環境影響評価制度の風環境調査にシミュレーションは利用できますか?

自治体により予測手法の記載表現は違いますが、利用できると考えられます。シミュレーションで評価することに問題ないか、前もって建築指導課等の担当部署へお問い合わせいただくことをお薦めします。

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東京都の総合設計制度の風害調査にシミュレーションは利用できますか?

東京都の総合設計制度では、商業地域においては、計画建築物の高さ100m以上は「風洞実験を行うとともに、原則として風向・風速計を設置し、建設前・後の観測を行うこと」とあります。また、商業地域以外の用途地域においては、計画建築物の高さ60m以上は「風洞実験を行うとともに、原則として風向・風速計を設置し、建設前・後の観測を行うこと」とあります。計画建築物の高さは建築基準法施工令による「高さ」を示しますが、上記未満の高さであればシミュレーションにより評価できると考えられます。シミュレーションで評価することに問題ないか、前もって担当部署へご確認いただくことをお薦めします。

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CASBEE(建築環境総合性能評価システム)-新築の風害評価にシミュレーションは利用できますか?

利用できます。CASBEEの「風害・日照阻害の抑制」の項で、評価する取り組み(シミュレーション等による風害の発生予測の実施)の程度で得点が変わっています。CASBEEはその影響を検討したか、配慮したかが得点の違いになり、シミュレーションは風洞実験と同じ得点となります。

<CASBEE新築及び新築(簡易版)>

  • ・敷地周辺の地形、建物、緑地等の現況と計画建物に対して、数値流体シミュレーションや風洞実験等を行って予測した場合に「大(2)」とする。
  • ・風向きに対する配置や形状の工夫を机上で検討した場合には「小(1)」とする。
  • ・実施しない場合は「無し(0)」。

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結果に関してのQ&A
住民説明会に出席して結果を説明してもらえませんか?
別途有償でご説明したこともありますが、説明会の状況によっては複数回の出席が必要となる場合もありますので、原則としてお断りしています。
正式な報告書までは必要なく、近隣説明会用の資料のみ欲しいのですが。
もちろん、近隣説明会用の資料のみという簡易な報告書の作成もお受けします。ただし、正式な報告書の作成費用分のコストは安くなりますが、16風向計算し風環境影響評価(村上評価)まで行うことは変わりません。なお、簡易といっても双方に誤解のないよう、十分ご理解いただけるポイントを押さえた資料を作成いたします。
設計のコンペティション用に簡易で良いので資料を作成してもらえますか?
簡易な資料を作成することもお受けいたしますが、資料の体裁によって費用も変わりますのでご相談ください。
プレゼン用にパーティクル(粒子)を飛ばした動画を作成してもらえますか?

通常は費用の面から動画までご依頼されるお客様は少ないのですが、対応は可能です。ただし、背景やビルの色の細かい指定、植栽形状の再現など、完全に3Dアニメーション風に作成することは現状できません。経験上、パーティクルのみ色が付いた動画の方が理解しやすいと思われます。

>>動画「ビル風シミュレーションはどうやるの?その2」はこちら

風環境評価尺度は現状2通りあるそうですが違いは何ですか?

日本においては、村上教授らによる評価基準と(株)風工学研究所の評価基準があります。

<村上評価基準>
日最大瞬間風速の発生頻度を3段階の風速(10、15、20m/s)において日最大瞬間風速の超過確率を計算し、その果から風環境を3つのランクに分けます。各ランクは具体的な空間使用用途の例(住宅街、事務所街等)と結び付けられています。なお、弊社ではランク3の規定値を越えるレベルの強風の発生が予測される風環境をランク4とし、「好ましくない風環境」として評価しています。詳細は該当文献か『資料室 “風環境評価尺度(村上評価)”』をご参照ください。

<(株)風工学研究所評価基準>
10分間平均風速を用いて風の頻度がA~Dのどの領域に属するかを評価、判断します。どちらの評価基準を用いてもほぼ同様の評価結果が得られますが、村上評価は日最大瞬間風速、風工学評価基準は10分間平均風速を用いて統計処理し評価していることに大きな違いがあります。

御社ではどちらの評価基準を使っていますか?
日最大瞬間風速に基づく村上評価基準を使用しています。場合によっては平均風速に基づく風工学研究所による評価基準でも計算可能です。
建物単体の簡易な検討で結果を説明されたのですが、どうなのでしょうか?
周辺に建物がない場合、計画建物の形状に近いアスペクト比での実験等の文献があれば、風速の増加率と増加域をある程度推定することは可能です。しかし、周辺に建物がある場合は、周辺建物との相互の影響が加味されていませんので、裁判ではその結果は通用しないと考えたほうが良いと思われます。同様に、既往の実験データを元にした簡易な風環境予測ソフトも幾つかあるようですが、設計者がその適用範囲を十分考え、判断材料の1つとして利用する分には構いませんが、そのまま近隣住民の方々へ説明するには問題があると思われます。
その他のQ&A
風洞実験の長所と短所は何ですか?

長所は実績が多くあることで信頼性が高いということです。建物の規模や高さによっては風洞実験が義務付けられる場合があります。短所は次のことが挙げられます。

  • ・計測ポイントしかデータを採取できない。
  • ・シミュレーションよりは費用が高い。
  • ・模型製作を含め報告書提出まで2ヶ月程度と時間がかかる。
  • ・実験が立て込んでいると順番待ちになる(模型ができていても試験がすぐには始められない)。
シミュレーションの長所と短所は何ですか?

長所は次のことが挙げられます。

  • ・検討内容にもよるが、風洞実験より比較的短時間で安価に結果を得ることができる。
  • ・風洞実験では計測ポイントの結果しか分からないが、シミュレーションでは解析範囲内であればどこの場所でも数値により判断することができる。
  • ・ビジュアルに結果を可視化することができるのでわかりやすい。

短所は次のことが挙げられます。

  • ・解析モデルの作成精度により結果が若干変動することがある。
  • ・検討地域の地盤が大きく傾斜していたり、高速道路や高架橋などがあると、それらの影響が大きいためモデル化しなければならないが、複雑な分モデル化にあたりコスト増になる。
風洞実験を行う法人が幾つかありますが、そこに直接依頼した方がその分費用は安くなると思うのですが、御社に風洞実験を依頼するメリットは何でしょうか?
直接ご依頼される場合、過去に依頼した経験があったり、試験方法などが分かっている場合は問題ありませんが、初めて依頼する場合は、二度手間にならないように必要な資料の準備を十分にされることをお薦めします。また、結果の報告書はあくまでも建築の専門家向けに作成されますので、内容が理解できるよう前もって専門用語や実験方法を理解しておいた方が良いと思います。さらに、近隣住民の方々への説明用資料は、報告書を読み込んでお客様側で作成することになります。費用の支払い条件も試験機関ごとに違い、報告書を受け取る前に費用を全額払い込む必要がある場合もありますのでよくご確認ください。弊社はご依頼されるお客様と試験機関との間に入り、風洞実験がスムーズに実施できるよう配慮し、その結果について十分理解されるようサポートいたします。
隣接建物の影響で風速が増加するのであれば、風圧力も割り増しする必要があるのではないですか?
隣接建物の影響(相互作用という)に着目した風圧力の研究はされていますが、建築基準法および建設省告示に規定されるまでには現在至っていません。「建築物荷重指針・同解説(日本建築学会編)2004年版」ではA6.12章(P382)に相互作用に関する記述がありますが、明確に割増率を導入するまでには至っていません。「風荷重に対する足場の安全技術指針(仮設工業会編)」では、隣接建物が高さ50m以上の場合に相互作用による風圧の割り増し(距離と建物規模に応じて1.1~1.3倍)を考慮することになっています。ただし、ここでは再現期間が1年の平均風速による風圧力で足場の強度検討をすることになっていますので、安全のため割り増しすることは合理的であると思われます。外装材用風圧力を求める風洞実験では、通常は周辺建物も再現して行いますので、その結果は相互作用が考慮されています。