Thermal load, Energy-conserving Simulation熱負荷・省エネルギーシミュレーション

開口部条件の違いによる
年間暖冷房負荷の比較

ガラス開口部からの熱負荷は、暖冷房負荷の大きな割合を占めます。ガラス開口部の断熱性能・遮熱性能や面積の違いによる暖冷房負荷の変化を把握することは、開口部設計をするうえで重要です。
ここでは、事務所ビル基準階ペリメータ部のモデルを用いて、2種類の窓面積および4種類のガラス品種について年間暖冷房負荷の比較を行いました。

計算ケース

  窓面積 ガラス品種
ケース1
  • 外壁の1/3が窓
  • 窓面積:9m²
  • 壁面積:18m²
  • 計:27m²
透明単板ガラス
透明単板ガラス+日射遮蔽フィルム
透明複層ガラス
Low-E複層ガラス
ケース2
  • 外壁の2/3が窓
  • 窓面積:18m²
  • 壁面積:9m²
  • 計:27m²
透明単板ガラス
透明単板ガラス+日射遮蔽フィルム
透明複層ガラス
Low-E複層ガラス

ガラス品種の熱性能値

ガラス品種 構成 日射
透過率[%]
日射
熱取得率[-]
熱貫流率
[W/m²K]
透明単板ガラス FL8 76.5 0.82 5.8
透明単板ガラス+
日射遮蔽フィルム
FL8+日射遮蔽フィルム※1 34.2 0.47 5.8
透明複層ガラス FL6+A12+FL6 65.3 0.74 2.9
Low-E複層ガラス Low-Eグリーン6
+A12+FL6
34.2 0.40 1.7
  • ※1日射遮蔽フィルムは、透明単板8ミリ+日射遮蔽フィルムの日射透過率がLow-E複層ガラスと同等、熱貫流率が透明単板8ミリと同等になるような仮想のフィルム性能値としました。
    下図に示すペリメータ部において、幅10m、奥行き5m、天井高さ2.7mのモデルで熱負荷計算を行い、ペリメータ部の熱負荷を算出しました。


事務所ビル基準階の平面図

単位床面積あたりの年間暖冷房負荷計算の結果は、以下のようになりました。

  透明単板ガラス 透明単板ガラス
+フィルム
透明複層ガラス Low-E複層ガラス
ケース1
窓面積9m²
暖房負荷 64.6 102.4 34.3 46.7
冷房負荷 245.7 195.3 254.3 211.9
合計 310.2 297.6 288.7 258.6
ケース2
窓面積18m²
暖房負荷 71.5 129.7 20.7 31.6
冷房負荷 307.1 218.5 326.7 250.3
合計 378.6 348.1 347.4 281.9

[MJ/m²年]

  • 透明単板ガラスと透明単板ガラス+フィルムの比較
    透明単板ガラス+フィルムは、透明単板ガラスに比べて、室内への透過日射量が減少するため、透明単板ガラスより暖房負荷が増加しています。しかし、日射遮蔽性能を高めているので冷房負荷は減少しており、Totalの年間暖冷房負荷は減少しています。
  • 透明単板ガラス+フィルムとLow-E複層ガラスの比較
    透明単板ガラス+フィルムは、Low-E複層ガラスと比較すると、断熱性が悪いので外気温度の影響を受けやすくなり、暖房負荷は大きくなっています。冷房負荷は透明単板ガラス+フィルムのほうが小さくなっていますが、暖房負荷が大きいため、Totalの年間暖冷房負荷は大きくなっています。
  • 透明複層ガラスとLow-E複層ガラスの比較
    Low-E複層ガラスは、透明複層ガラスと比較してTotalの年間暖冷房負荷は、窓面積が9m²の場合で1割程度、窓面積が18m²になると2割程度減少しており、窓面積が大きくなるとLow-E複層ガラスの効果が顕著になることがわかります。

この計算結果から、Totalの年間暖冷房負荷を効率よく低減させるには、開口部の日射遮蔽性能を高めるだけでなく、同時に断熱性を向上させる必要があることがわかります。
なお、窓面積18m²のLow-E複層ガラスは、窓面積9m²の透明単板ガラス・透明単板ガラス+フィルム・透明複層ガラスより、年間熱負荷が小さくなっています。遮熱・断熱性能に優れるLow-E複層ガラスを用いることで、年間熱負荷を抑えながら窓面積を大きく取ることができ、窓の開放感など室内居住環境を向上させることができます。

(参考)
基準階南側ペリメータ空間全体の年間暖冷房費用および、CO2排出量は、次のようになりました。

基準階南側ペリメータ空間全体の年間暖冷房費用(電気式エアコンによる空調)

年間暖冷房電力使用量料金[円/年]
  透明単板ガラス 透明単板ガラス
+フィルム
透明複層ガラス Low-E複層ガラス
ケース1
窓面積 9m²
279,294 265,969 278,812 243,768
ケース2
窓面積18m²
323,477 300,974 333,960 276,256

年間暖冷房電力使用料金算出時の電気料金単価およびエアコンの機器効率は、下記の値を用いました。

  • ・基本料金単価:1,638[円/kWh・月]
  • ・電力従量料金:13.75[円/kWh]
  • ・機器効率:暖房4.0、冷房3.5

基準階南側ペリメータ空間全体のCO2排出量

CO2排出量[kg-CO2/年]
  透明単板ガラス 透明単板ガラス
+フィルム
透明複層ガラス Low-E複層ガラス
ケース1
窓面積 9m²
暖房負荷 373 592 198 270
冷房負荷 1,623 1,290 1,680 1,400
合計 1,996 1,882 1,878 1,670
ケース2
窓面積18m²
暖房負荷 413 749 120 183
冷房負荷 2,029 1,444 2,159 1,654
合計 2,442 2,193 2,279 1,837

CO2排出係数[kg・CO2/kWh]:0.555

  • ※計算モデルで算出した年間暖冷房負荷を、基準階南側ペリメータ空間全体に換算して算出しています。